馬産地としての南部地方

岩手県は、古くから馬産地として知られています。16世紀後半に馬耕の技術が入ってくると、馬を家族の一員として大切にする気持ちから、人と馬が一つ屋根の下で暮らすこの地域独特の形をした民家「南部曲まがり家や」が生まれました。
このように培われてきた馬愛精神より、「馬」にちなんだ端午の節句(5月5日)には、農繁期中唯一の休息日として、仕事をせず農耕に疲れた愛馬を癒やし、無病息災を祈ることを目的に、馬の守り神である 「蒼前神社」や「駒形神社」へお参りするようになりました。それが慣行化され「お蒼前参り」として定着していきました。このお蒼前参りの際に、小荷駄装束(こにだしょうぞく)を着せた馬を引くのが流行し、チャグチャグ馬コの原型が芽生えたと言われています。

行進行事の誕生

1930年に馬好きで知られる秩父宮殿下がご来県された際に、滝沢市の鬼越蒼前神社(おにこしそうぜんじんじゃ) 参詣後、列を成して盛岡八幡宮の神前馬場で馬ぞろいをお見せしたところ大変な評判となったため、翌年からもお参りの後に盛岡八幡宮まで行進し、開催するのが恒例となりました。
60頭~100頭ほどの馬が、鬼越蒼前神社から盛岡八幡宮まで14キロの道のりを約5時間かけて行進します。このような形式の祭りは世界的にもほとんど例がなく、1978年に文化庁から無形民俗文化財に指定されました。
またチャグチャグ馬コの名称は、馬が着ている煌びやかな装束についている大小700個の鈴の音が「チャグチャグ」と鳴ることが起源となっていますが、その鈴の音が1996年に環境庁(当時)の「残したい日本の音風景100選」にも選出されました。